おきなわ子ども支援ガイドブックができるまで

①戦略会議と高校授業料減免制度

2009年、子ども支援ネットワーク交流学習会の実行委員会のメンバーと高校の教師数名が集まって、高校生が直面する課題に取り組むことを目的に、子ども支援ネットワーク交流学習会実行委員会の「戦略会議」をスタートさせました。

私たちが取り組んだのは沖縄県の県立高校の授業料減免制度についてでした。
経済的に困窮している家庭の高校生が、学業をあきらめないためのセーフティーネットとして設けられているこの制度。しかし、その手続きの煩雑さのために、申請をあきらめるケースがあるという声がありました。

授業料減免制度を学ぶ学習資料として、戦略会議で作成したのが下記の資料です。

沖縄県の授業料減免制度

申請に必要な手続きの流れが分かると、保護者も学校も入学から5月の締め切りまでの短い期間の中で懸命に書類を整え、申請していることが分かりました。

九州各県の減免申請の資料も提供してもらい比較しながら、私たちができることは何かということを考えました。

行政も教育現場の職員も、子どものために何かしたいという思いは同じ、ということを土台にして両者が協働できることは、何かを探ることにしました。予算に関わることは、担当者や、一つの部署だけで片付く問題ではありません。
そのため、気持はあってもどうしようもなく、現場と行政とで協働できる可能性は低いことが想像されます。
しかし、制度の枠組みのなかで子どもや親のニーズに合わせた運用の仕方に関すること等については、協働して取り組める可能性が高いのではないでしょうか。

そこで、沖縄県高教組が毎年行っている沖縄県教育委員会への教育条件整備の要求書の中に、下記の要望を付け加えてもらいました。
ひとつは、授業料減免の制度の新入生への説明の時期を、従来の入学式ではなく、入学者オリエンテーションでもできるようにすること。
もうひとつは、所得を証明する書類は、3月以前に発行したものでも認めてもらうこと。
そして最後に、減免申請の書類の締め切りを、のばすことでした。

最後の一つは、減免の措置が遅れることを理由に認めませんでしたが、 最初の要望は県も積極的に取り組んでもらいました。また所得を証明する書類については、従来から4月以降のものと限定していたわけでなかったことが分かりました。

中部のある高校では、入学者オリエンテーションのなかで、減免制度に触れ、詳しくはオリエンテーションのあとで事務室で説明しますと紹介したところ、多くの保護者が説明を求めに来たそうです。

翌年の2010年から高校の授業料の無償化がスタートし、授業料減免制度はなくなりましたが、この取り組みがガイドブック作成のきっかけとなりました。
 

②高校授業料無償化後からガイドブック作成へ

減免制度に対する私たちの取り組みの影響を確認する間もなく、高校授業料が無償化しました。
第3回の九州沖縄地区子ども支援ネットワーク交流学習会で、高校授業料減免制度について報告し、この取り組みについてはひと段落したあと、今後の活動についてメンバーで話し合いました。子ども支援ネットワーク交流学習会の実働グループとして位置づけられる戦略会議で今後の取り組みについて、意見を出し合ったときに、具体的に何かを作る活動をしたいという意見が出ました。そしてでてきた案がガイドブックの作成でした。

第1回目の子ども支援ネットワーク交流学習会で既に、福岡県と那覇市を例にとって、子育てや教育に関わる支援や制度の資料集が配布されていました。九同協の手によるこの資料集は、当時の私たちにとっては、子育て支援の諸制度を知る入り口となった資料でした。
子育てのライフステージを縦軸にとり、寄り添うように福祉の諸制度が列記されている図は、私たちの作成したガイドブックの原型とも言えるものでした。

一口に、子育てや教育に対する支援を目的とした諸制度の一覧という、性格をもつガイドブックにも様々な形態があります。そのひとつの典型とも言えるものが、鹿児島県教組が発行している、「子どもの福祉ハンドブック」です。
これは、2009年に発行された「子どもの福祉ハンドブック」は、Q&Aの形式になっています。カラー刷りのB5サイズで持ちやすく、イラストがふんだんに使われていて読みやすい冊子です。

つづく