2012年11月27日火曜日

第6回九州・沖縄地区子ども支援ネットワーク交流学習会

まとめ「課題の整理と取り組みの方向性について」
沖縄大学  学長 加藤彰彦さん




子ども支援ネットワーク交流学習会というこの集会の名前は、全ての意味が込められていると思います。これが成立してから6回目になりますが、この間沖縄は沖縄で、さまざまな活動をしてきました。九州では、同和教育の中で生活を保障するという支えあいをしっかり行ってきた長い歴史があります。沖縄には潜在的に「ちむぐりさー」という、苦しい立場の人をほっておけない、やむにやまれず手助けする精神があり自然発生的に「ゆいまーる」というしくみでお互い支えあってきました。どちらもいいところを持っていて、それを連動できればいいと思っていました。沖縄は戦後の占領時代に、沖縄のいいものがどんどん失われて、さらに復帰後、日本国憲法のなかの9条、25条が適用されない、むしろ無視されてきた、沖縄中がオスプレイはいらないと訴えているのにも関わらずそれを全く聞かない。それを覆い隠すようにしてオスプレイを配備するという凄まじい状況になっています。ほんとにこれでいいのか、私たちは、社会を変えていく方向に一歩踏み出さないといけないかもしれません。
今回のこの集会では、沖縄のアンデンティティーをどう作り上げていくかということを考えてみたいと思っています。九州の方たちが最も苦しい人たちに寄り添い支えるなかで自らも開放してきた歴史のなかで、苦しい人たちに寄り添いながら社会を変えてきました。今までは、私たちは、まともに問題に向き合ってきましたが今回、川畑さんにお願いしたのは、僕ら、もう一回広い意味での自分たちの生き方とか、暮らし方とか、見直してみたい。私たちは一生懸命やっているつもりですが、そのまま足をすくわれてはいないかということも含めてもう一度見直してみたいという思いがありました。今日伺った川畑さんのお話の受け止め方はいろいろあると思いますが、一番根っこにあるのが、一人だけで幸せになろうとか、幸福になろうということはできないだろう、一番自分たちに身近な人が幸せになることをとおして自分たちも幸せになる。こういうことの積み重ねが、一つの時代を作り、社会を作ることに繋がる、僕はそういう受け止め方をしました。それぞれの家庭や地域や職場に議論を下ろさないといけないといくことを、今回の学習会で確認されているように思います。世界平和のためとか日本のためとかということは大事なんだけれど、自分たちの暮らしの中にしっかりと地に足をつけて、その状況を少しずつ変えていきたいと思っています。

沖縄を子どもにとっていい社会を作っていこうとするとき、自分に最も近い存在である子どもたち、子どもという存在を軸に時代を変えていこうと、この子どもたちは次の時代に向けて成長していく、次の時代へのつなぎになっていく、その子どもたちに関わるということは、20年、30年先まで含めた時代の変革を見通すことでもあります。沖縄のアイデンティティーを考えるということは、子どもたちの問題に真剣に関わることで時代を変えていこうということだと思います。

1分科会では、沖縄市が子どもの街宣言をし、それを実際にやるためには子どもの現実を知らなければならないということで、実態調査をした。小学校4年生、中学2年生全員、約3500人を対象にアンケート調査を行いました。このこと自体は、今までにないことです。そして子どもたちが生の声を出してくれるような質問を出した。そのなかで、子どもたちは「人の役に立ちたい」、「自分がやれることをやらせてほしい」という答えが返ってきました。この次にこの声を受け止めたものを、どう具体的に施策に活かしていくかが課題です。
福岡県の田川市の金川小学校において十年にわたって続けられた取り組みは、子どもたちは就学前で大きな格差があるという現実を解き明かしながら、子どもたちのセルフエスティームを、地域の人との関係をとおして身につけていく、やる気を起こしていくことを丁寧にやっています。この金川小学校で行ってきた調査の方法、アンケートの仕方を沖縄が真摯に学ぶべき時が来ていると思います。しかも金川小学校では最も厳しい状況におかれている子どもたちにどう寄り添うか、この課題に到達しているという報告でした。沖縄でこれから直面する、最も厳しい状況の子どもたちへの関わり方を、金川小学校の実践から学んでいかなければなりません。

福岡県同教との交流の中から生まれたガイドブック、これは高教組の皆さんががんばって素晴らしいものが出来上がりました。このガイドブックを私たちは県教育庁に行って、お渡ししてきました。ガイドブックを小学校から高校まで一つの学校に5冊ずつプレゼントしますと言ったら、統括監をはじめ、みなさん感動してくれまして、すばらしいものを作ってもらいました、これ必ず配りますと言ってくれました。今までなかったことです。こういう関係ができたこと、これは教育委員会も悩んでいてできなかったことができてきた、これからこの関係を大事にして、沖縄が一つになって、きちんと子どもたちを支えていくという活動が始まるという最初の過程を作ってくれたのが高教組の皆さんでした。また、この集まりが基盤となってガイドブックができたわけです。分科会では、このガイドブックは沖縄県全体のものですが、地域の中でこのガイドブックを作ろうとする動きが生まれてきた。自分たちの地域、自分たちの施設のなかで、もっと具体的に、あそこに行けばいいといったことが分かるものを作りましょうということができてきたという報告でした。このように、一つ一つの活動が定着してきている。

2分科会では障害を背負った子どもたち、学生たち、そして卒業してからの対応は、学校だけではできないということが非常に明確になっていたと思います。例えば、ある生徒が学校の中でできなかったことが実習に行ったとき、サッカーが好きだということから話しが始まって、話ができる、自分がやりたいことを言えるようになる、あいさつができるようになる。障害のある人たちは、僕らが途中で飽きてしまうようなことを、しっかりとやり続けることができる、これをみんなが評価すると、これが仕事にもつなげられる。障害のある人たちは、実際に差別を体験している場合があります。障害のある人と地域の人たちが相互の信頼関係を育んでいきながら、つながりをどう作っていくか、ということがキーワードだと思います。本人の願い、悩みを出発点に、学校を開きそしてエンパワメントしていく。最大の課題は学校を開くことです。これがまだできていないと思います。こんなにいじめがひどい状況で凄まじい数ですが、学校はこれまで抑えようとしてきた、ですから学校の何がこのような状況を作り出しているか、今日の川畑さんの話にもありましたが、競わせる、他者と比較させる、これを学校で徹底的にやっているわけですから、いじめはなくならないという状況に追い込まれている。一人ひとりが自己実現をしていく、自分の目標を見つけて生きていくということを、みんながやるような学校にするためにはどうすればいいのか、制度やシステムも含めて、大きな課題にぶつかっているというのが今の状況だと思います。今回、そういった学校の課題も大きく出てきています。沖縄の問題は一つに学校の先生たちが解放されること、それを課題として、この場にもっともっと顔を出していただきたい。そして、この会に参加すると展望が見えてくる。そのことによって教師としての仕事に、改めてやりがいをもって向かうことができるかもしれない。そういう場にこの集まりがなるといいと思います。

この会も6回目を迎えましたが、この間、本当にご尽力いただいた九同教の先生方の努力が本当に沖縄にしみ込んでいると思います。そして、沖縄で地道に活動している方々の取り組みが定着し始めている。来年度に向けてさらに活動の輪を拡げていっていただきたいなあと思います。一緒にがんばっていきましよう。そしてきっとできる、こんな悪い時代がいつまでも続くわけがない、いい時代がくると「思う」のでなく、いい時代に「する」という気持ちでいたいと思います。長い時間ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。